【江戸切子プロジェクト②】特別な技法を受け継ぐ職人、伝統と革新の融合を実現し続ける工房との出会い

2022.04.08
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2020年10月、Coyoriは誕生から10周年を迎えました。

10周年を迎えることができたのも、商品を愛用くださっているお客様あってこそ。

「Coyoriをもっと好きになってもらうために」

「Coyoriのこれからに期待してもらうために」

これまでの感謝の気持ちを込めて、お客様が喜んでくれるものをお届けしたい。

そんな想いを込めて、10周年に向けた特別プロジェクト【「美容液オイル特別版」の創作】が始動しました。

当時プロジェクトを担当したスタッフの佐﨑が、連載形式で10周年特別プロジェクトの軌跡をレポートで振り返ります!

*第一弾のレポートはこちら

第二弾の今回は、美容液オイルの10周年限定容器を製造してくださる「江戸切子工房」と出会うまでのお話と工房のご紹介、当時の製造途中の試作品をちょっとだけお見せしたいと思います。

※こちらは2020年11月に販売終了しています。

目次

ご縁が繋いだ江戸切子との出会い

「Coyori10周年を記念した物を形にしよう!」と考え始めたのが、2020年1月。企画検討を重ね、「江戸切子で美容液オイルの限定容器を作ろう」と動き始めたのがひと月後の2月。今からお話するのは、そのまたひと月後の2020年3月頃のお話です。

「日本の文化・生産者を未来につなげていきたい」というCoyoriの想いを体現すべく、日本工芸品である「江戸切子で美容液オイルの容器」を作ることを決めたものの、いざ依頼先となる江戸切子工房を調べてみると、現存する工房はかなり少なく、江戸切子の職人さんは世界で100人ほど。厳しい後継者不足問題を抱えているのが現状でした。

そんな数少ない工房の中から、一緒に挑戦いただける方を探して数件ご挨拶に。企画のお話は聞いていただけるものの、

「すでに受け持っている日々の仕事が忙しく手一杯な状態だから難しい。」

「化粧品の容器を作ったことがない。新しい依頼を受ける余裕はない。」

と、厳しいお返事ばかりでした。

お断りを受けるたびに「この企画って無謀なのかもしれない……」と自信を失くし、企画断念が頭をよぎり、夢にまで出てくることもありました。

「自分1人の力では実現は厳しいかもしれない」と最後の望みをかけてFacebook・Instagram・Twitterで繋がっているあらゆる友人に向け、「江戸切子工房の知り合いを紹介してほしいです!」という連絡をしました。

ただ、私1人のツテだけでそんな簡単に見つかるわけもなく、誰からも「YES」の連絡はありませんでした。

諦めかけていた1か月後、大学時代の友人から「江戸切子の工房ってまだ探してる?」という一通のメッセージが。

ちょうど帰宅途中の電車の中でそれを目にしたのですが、電車内で大喜びしたい気持ちを抑えて、膝の上で強く携帯を握りしめガッツポーズしました。

そんな1人の友人によって「”友人”の”友人”の”知り合い”」という遠ーい繋がりを手繰り寄せ、ある工房とお会いすることができました。

人と人の繋がりから生まれたその出会いは、想いを”こよる”Coyoriらしい運命的なものを感じました。

親子3代で紡いできた下町のガラス加工工場

隅田川の東側に位置する、清澄白河。

コーヒーとアートの街として、知名度が上がっているとともに新しいお店が生まれ、訪れる方も増えているそう。川と運河に囲まれた静かな寺町に、その工房はあります。

『椎名切子(GLASS-LAB)』という、1950年の創業以来、おじい様の代から続くガラス加工工場。

どこか趣のある工房の扉をたたくと、「よく来たね!」と笑顔で迎えてくれたのが椎名隆行さんでした。

緊張する私を見て、「まずはどのようにして江戸切子ができるのか工場を案内するね!」と招き入れてくださり、ぐるりと工場見学をさせていただきました。

足を踏み入れた瞬間、その趣ある空間に息を飲みました。

工房内のほとんどを占める4台の研磨機は創業当時から使っている手作りの木製機械。

この工場以外ではめったにお目にかかれない、ほとんど産業遺産的な貴重な機械だそう。

故障しては修理を繰り返し、代々大事に使われているそれらは、木材の風合いが漂うなんともいえない重厚感で歴史の重みを感じました。

事前に画像では拝見していたものの、それだけでは感じ得なかった、不思議でどこかあたたかく、懐かしくも感じるその空気感はまるでジブリの世界に紛れ込んだかのような感覚でした。

ガラスを削る⾳とベルトがススーっと滑りながら回る⾳、それによって⼤きな滑⾞がガシャンガシャンと動く⾳。

その全てに圧倒されて、時間が⽌まったかのように夢中になって眺めていました。

椎名切子(GLASS-LAB)で加工しているのは、江戸切子の技法のひとつである「平切子」。研磨機を使ってガラスの面を平たくしたり滑らかにしたりする技法です。

隆行さんによれば平切子ができる職人は今、世界でも10人くらいしかいないそうで、隆行さんの父・康夫さんはその数少ない平切子の職人さんです。

隆行さんの弟・康之さんはサンドブラストの技法を得意とする職人さん。

サンドブラストは、砂などの研磨材をコンプレッサーで吹き付けて加工する技法のことです。

元々は錆落としや塗装はがしなどに使われていましたが、ガラス面に文字や模様を彫刻する技法としても広く使われています。

世界に10名ほどしかいない「平切子」の技術と、細かな砂を吹き付けてガラスを削る「サンドブラスト」の技術を組み合わせて誕生したのが、椎名切子(GLASS-LAB)考案の「砂切子」です。

水を注ぐと底面に描かれた桜の花が全面に広がります。

また、ご兄弟で『江戸切子新作展2020』藤巻百貨店賞の1位と2位を獲得

兄の隆行さんが1位、弟の康之さんが2位をダブルで受賞されました。

藤巻百貨店賞は他賞の審査員票とは異なり、一般人対象のWEB投票によって決まるものなので消費者の評価が直に反映され、どれだけ多くの人に支持されたか分かる名誉な賞なのだそうです。

↑『江戸切子新作展2020』藤巻百貨店賞の1位受賞作品『太陽の花』

椎名切子(GLASS-LAB)と作り上げる美容液オイルの限定容器

そんなご実績のある椎名さんへ緊張で言葉を噛みながらもCoyori 10周年企画のお話をさせていただいたところ、「実現するまでの道のりは険しいだろうけど一緒に頑張ろう!」と訪問したその日に二つ返事でご承諾いただくことができました。

ただ、それ以降はコロナの影響でなかなかお会いすることができず、オンラインでの打ち合わせを何度も重ねました。

そして、2020年9月。

久しぶりに椎名切子(GLASS-LAB)を訪問した際、ずっと聞きたかった「なぜ依頼を引き受けてくれたのか?」という質問をしてみました。

椎名さんは「んー」と1、2秒考えられた後に、「一番は佐﨑さんの想いと熱意、真剣な気持ちが話し方や目を見たら伝わってきた。ぜひ一緒に仕事をしてみたいと思ったよ!」と優しい表情でありつつも、力のこもったしっかりとした言葉で話してくださいました。

それを聞いた瞬間、椎名様の言葉が体をめぐってじーんと胸が熱くなり、心が震えたのを今でも覚えています。

最後まで諦めなくて本当に良かったな、椎名さんと出会えて良かったなと心の底から思いました。

加えて、「美容液オイルも使ってみたけど、良い商品を真面目に作っている印象を受けたよ。使ったらそれまでで廃棄されてしまう化粧瓶をサスティナブルな形で使うという取り組みに将来性を感じ、今までにない形で製造できることにワクワクしたのが大きかったかな。」と話してくださいました。

Coyoriの製品へのこだわりやお客様への想いが伝わり、とても嬉しかったです。

そんな、日本の伝統を大切にしつつ、新しいことにも挑戦し続けている椎名切子(GLASS-LAB)が製造してくださる美容液オイルの江戸切子限定容器は、2021年9月完成予定!

これを機に、「より多くの方に江戸切子の魅力を知ってもらいたい!」という一心で製造に取り組んでいます。

最後に、試作検討を重ねている江戸切子の限定容器を少しだけ。

※こちらは2020年11月に販売終了しています。

次回は、江戸切子加工を施すガラス瓶が決定するまでのお話をお伝えしたいと思います。

ぜひご覧ください!

 

*バックナンバー

【江戸切子プロジェクト①】世界で数個だけ、美容液オイル特別容器の開発秘話