【江戸切子プロジェクト③】世界に一つの小瓶がつなぐ七つのご縁をたぐるまで。江戸切子の美容液オイル

2022.07.20
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2020年10月、Coyoriは誕生から10周年を迎えました。

10周年を迎えることができたのも、商品を愛用くださっているお客様あってこそ。

「Coyoriをもっと好きになってもらうために」

「Coyoriのこれからに期待してもらうために」

これまでの感謝の気持ちを込めて、お客様が喜んでくれるものをお届けしたい。

そんな想いを込めて、10周年に向けた特別プロジェクト【「美容液オイル特別版」の創作】が始動しました。

当時プロジェクトを担当したスタッフの佐﨑が、連載形式で10周年特別プロジェクトの軌跡をレポートで振り返ります!

*第一弾のレポートはこちら

*第二弾のレポートはこちら

第三弾の今回は、江戸切子加工を施すガラス瓶が決定するまでのエピソードをご紹介します!
“ガラス瓶”と一言で表しても、意識してよく見てみるとその種類は本当に様々。たくさんあり過ぎて決めきれず、最終手段として自分でガラスを吹きに行こうかとも考えたほど。笑

思考錯誤する中でガラス瓶が無事に決定しましたので、今回はその全貌をぜひご覧ください。

そして、最後に江戸切子加工したデザインもちょっとだけ!少しずつ形になっていく江戸切子の美容液オイル容器の製造過程を一緒に愉しんで、応援していただけると嬉しいです!

※こちらは2020年11月に販売終了しています。

知れば知るほど惹かれていく、江戸切子の奥深さ。

そもそも江戸切子とは、ガラスの表面に切り込みを入れて表現する文様が特徴のカットガラス。独特で繊細なカットに光が反射して煌めきを生み出します。伝統工芸品として名高く、お土産屋さんや物産展で目にされた方も多いはず。

ただ、そのガラスに種類があることをご存知ですか?

実は通常の江戸切子ガラスに使用される素材は、ソーダガラス製とクリスタルガラス製の2種類あります。

ソーダガラスは主原料の珪砂にソーダ灰と石灰等を混ぜて作られたガラスで、軽さと丈夫さが特徴。最近よく見かける「うすはり」系のグラスのように高品質なものも多いです。

それに比べてクリスタルガラスは酸化鉛等が混ぜられたガラスで、ソーダガラスに比べるとキズが付きやすいため取り扱いに注意が必要ですが、屈折率が高いために透き通るような透明感があります。手に持った時のずっしりとした重さも特徴のひとつです。

同じガラス加工でも違う、「シャープ」なカット加工が刻まれた江戸切子と「ぼかし」の柔らかさがある薩摩切子。

続いて、切子と言うともう一つ、鹿児島の薩摩切子も有名ですよね。江戸切子と薩摩切子の大きな違いは、色の表現と文様にあるといわれています。

薩摩切子は、色の濃いところから中面へいくにつれて段々と色が薄くなっていき、グラデーションになっているのが特徴です。このグラデーションは「ぼかし」といわれ、透明ガラスの上に色ガラスを被せた分厚い色被せガラスにカットすることで生まれます。

一方で江戸切子は、江戸時代に作られたものはすべて無色透明。透明のガラスにカット加工されたのがはじまりと言われており、今でこそ薩摩切子と同じように色被ガラスを用いるのが主流となってきました。
薩摩切子のカットは「ぼかし」が特徴であるのに対して江戸切子は色ガラスと透明ガラスのコントラストがよりシャープではっきりとしているのが特徴です。

よく眺めて見ると、色つきや模様の感じまでその違いがはっきりと分かります。

初っ端から最大の難題に直面!?“江戸切子加工”が映えて、“Coyoriらしさ”も感じられる瓶を。

「どんなガラス瓶に江戸切子加工をしよう?」
そんな考えを巡らせていたのは、2020年の春ごろでした。

江戸切子の美容液オイルを実現するために必要なのは、まずはベースのガラス探し。そもそも江戸切子加工を施されるのがぐい吞みの形が多く、すでに色加工された披せガラスのぐい吞みやグラスの形のものがほとんど。美容液オイルという液体を保管する化粧瓶とは程遠い形状ばかりでした。

”10周年を記念するものだから思いっきり色鮮やかで、切子加工が映える華やかさもあり、化粧瓶としての女性らしさもある最高に素敵なものを!”

そう心を弾ませていたのもつかの間、すぐに直面した現実は厳しいもので“美容液オイル=液体”が入ることに加えて、Coyoriは通販の化粧品ブランド。美容液オイルを入れても漏れずにお客様へお届けできて、化粧瓶として日常使いができるという最低条件をクリアできるガラス瓶探しに大苦戦しました。

加えて、スキンケア品として日常使いしていただくことが大前提なので、通常の美容液オイルのように中身の出る量を調整する中栓があったり、しっかりとキャップがしまって水分や油分が飛んでしまわないということは最重要事項。
実在する江戸切子の形状ではそれは叶わず、日常的に目にする様々なガラス瓶にまで視点を広げて想像を膨らませるしかありませんでした。

その想像は次第に幅をきかせていき、祖父母家にあったガラス瓶でつくられたしょうゆ挿し、百円均一ショップに並ぶ花瓶、ファミレスに置いてあるつまようじ差し、おしゃれなインテリア雑貨店の用途不明な素敵なガラス瓶、、、などなど。

少なくとも1か月間はガラス瓶を探し求めて、容器を指ではじいてはガラス素材かを確認したり、キャップを外して奥底まで中を覗き込んだり、”ガラスマニア”と言っていいくらい、ガラスを追い求めた生活をしていました。

私の画像フォルダは今見返しても、何者!?と思うほどガラス瓶に溢れています。笑

そんな頭を悩ませていた私を救ったのが、椎名さんの「せっかく10周年を記念して江戸切子っていう特別な加工をするなら、Coyoriの美容液オイルのガラス瓶を使うのはどう?」という一言でした。

「いやいや、まずはそこから考えるでしょ!」と思う方もいるかもしれませんが、私が考えていたのは“とびきり素敵なガラス瓶”。手元にある美容液オイルには目もくれず、いかにユニークで特別感満載の形をしたガラス瓶を加工できるかということだけに一心不乱でした。

椎名さんのこの一言が、もともとの企画の本質であった「日本の伝統を日常になじむ形で多くの人にお伝えしていきたい」ということを考え直させ、この企画に対する想いをより強くさせるきっかけとなり、数か月経った今でも担当者としての気持ちを奮い立たせる言葉になっています。

この選択こそが、“江戸切子加工”が映えて、“Coyoriらしさ”も感じられる限定容器を生む最初の一歩となりました。

第二歩目は、着実で慎重なサイズ選びを。

実はCoyoriの美容液オイルの瓶は今でこそ肩がなめらかなものを採用していますが、以前は少し角ばったものもありました。20mLと40mLを販売している他にも、瓶としては60mLや80mL、100mLまで存在します。

それ以外にも、検討した化粧品瓶としては底にいくにつれて太くなっていくもの、丸ぼったいもの、細くスタイリッシュなもの、大きさに限らず形までこだわって様々な瓶を検討しました。

ガラス瓶が決まった今でも捨てきれなくて、私のデスクには空き瓶でいっぱいの箱が置かれています。笑

”大は小を兼ねる”精神で、最大の100mLサイズで大容量をお届けすることも考えたのですが、Coyoriの美容液オイルは二層式。使用時に振っていただくことが大切なスキンケア品のため、しっかりと手にフィットして振りやすく、キャップも開けやすいことが大事だと考えました。

そうして辿り着いたのが通常の美容液オイルの40mLサイズでした。

ガラス瓶を検討していく過程で椎名さんにも様々なサイズのガラス瓶を確認いただきましたが、江戸切子加工が可能かどうかはもちろん、肩がなめらかで下の方にかけて狭まっていく形状が平切子の面加工をより一層際立たせること、そして一番はCoyori10周年記念として美容液オイルの特別版とするのであれば、いつも愛用いただいている美容液オイル40mLサイズしかない!と答えは一択でした。

Coyori誕生10周年を記念する瓶が、お客様の10年先20年先まで心を癒す存在となるように。

江戸切子と聞くと色鮮やかな青や赤のグラスを思い浮かべる方も多いと思いますが、先述した通り江戸切子の始まりは透明ガラス
透明だからこそ際立つ「砂切子」の繊細さを活かしたいと思い、今回は透明ガラスを採用しました。

美容液オイルの化粧瓶として使用いただいた後には一輪挿しとしてもお使いいただけて、好きな花や季節の花を挿して四季の移ろいや生活を彩り豊かに愉しんでいただけたらと考えています!
食卓や窓際に置かれて“生活になじむ”その風景を想像すると、透明ガラスを選んで良かったなと数か月経った今でも思い返します。

そして、その透明ガラスに加工された切子加工がこちら!

たくさんの円が連なっているのがご覧いただけますでしょうか?

椎名切子のサンドブラスト技術は世界でも最高峰と言われています。試作品を手にした瞬間、その繊細さに息を飲みました。幅0.09mmの線ですら再現可能というから驚きです。手仕事ならではの温もりもあり、細かく重なり合った線は何度見てもうっとりします。

刻まれているのは七宝(しっぽう)模様。七宝とは仏教の教典に出てくる七種の宝のことで、金,銀,瑠璃【るり(青い宝石)】,玻璃 【はり(水晶)】 ,しゃこ貝 ,珊瑚,瑪瑙【 めのう(縞状の鉱物)】であると言われています。

円形が永遠に連鎖し繋がるこの柄に、円満、調和、ご縁などの願いが込められた縁起の良い柄とされています。また人の御縁や繋がりは、七宝と同等の価値がある事を示している柄でもあります。

そして、この七宝模様をデザインとして提案してくださったのは他でもなく椎名さんでした。七宝模様に込められた想いは次回の第四弾でご紹介します!

Coyori誕生10周年を記念する瓶が、お客様の10年先、20年先と年を重ねるごとに愛着が増して心を癒す存在となるように。

第四弾もぜひご覧ください!

 

*バックナンバー

【江戸切子プロジェクト①】世界で数個だけ、美容液オイル特別容器の開発秘話

【江戸切子プロジェクト➁】特別な技法を受け継ぐ職人、伝統と革新の融合を実現し続ける工房との出会い