【江戸切子プロジェクト④】心震わせる、「七宝」文様に込められた職人の想い。ご縁が紡いだ世界で1つの江戸切子

2022.07.26
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2020年10月、Coyoriは誕生から10周年を迎えました。

10周年を迎えることができたのも、商品を愛用くださっているお客様あってこそ。

「Coyoriをもっと好きになってもらうために」

「Coyoriのこれからに期待してもらうために」

これまでの感謝の気持ちを込めて、お客様が喜んでくれるものをお届けしたい。

そんな想いを込めて、10周年に向けた特別プロジェクト【「美容液オイル特別版」の創作】が始動しました。

当時プロジェクトを担当したスタッフの佐﨑が、連載形式で10周年特別プロジェクトの軌跡をレポートで振り返ります!

 

*第一弾のレポートはこちら
*第二弾のレポートはこちら
*第三弾のレポートはこちら

 

第四弾の今回は、「江戸切子の加工デザインが決まるまで」のお話です。
本文の最後には、2021年5月に実施した撮影秘話も少しだけお話できたらと思います!

実は、江戸切子の限定容器は企画発案から製造、広告制作に至るまで一貫して私、佐﨑が担当しています。製品としてだんだんと形になっていく様や販促物掲載のためにおめかしした姿まで、ずっと見守り続けてきました。(それゆえに愛情が溢れてこぼれまくってレポートも第四弾にまでなってしまっています。笑)

だんだんと形になってきた江戸切子の限定容器の製造過程を一緒に愉しんで、応援していただけると嬉しいです。

※こちらは2020年11月に販売終了しています。

古くから想いを込めて。大切に刻まれてきた江戸切子の伝統紋様。

日本には古くより織物や陶磁器、室内装飾で使用される伝統紋様があります。それらは襖や家具の柄として長く愛されてきました。

江戸切子のカット加工紋様にも様々な意味が込められており、日本の伝統行事や風習から生まれた歴史的背景、日本の伝統文化の奥深さが見えてきます。その文様と色合いによって江戸切子は様々な美しい顔を見せているのです。
江戸切子の紋様の代表的なものに「魚子(ななこ)」「菊繋ぎ」「六角籠目(ろっかくかごめ)」「八角籠目(はっかくかごめ)」「麻の葉」「矢来(やらい)」「七宝(しっぽう)」「菊花(きくか)」「亀甲(きっこう)」などがあり、そのひとつひとつに大切な想いが込められています。

たとえば、「魚子(ななこ)」。魚のうろこを思わせる細かいカットが特長的な紋様です。

江戸切子が始まった江戸時代の作品にも見られるなど、長年親しまれていて今でも多くの江戸切子に見られる基本的な文様の一つです。ななこという読み方の語呂合わせで毎年7月5日は「江戸切子の日」になったそう。
繊細で細やかなカットが光を反射したときの優しい輝きや、カット面の触り心地など、シンプルなデザインでありながらも江戸切子の持つ美しさをストレートに感じることができます。

斜めの線がたくさん入っていて小さな四角が並んでおり、切子の細かな光の反射が魚の卵のように連なって見えることから「魚子(ななこ)」と名付けられ、“子孫繁栄”の意味が込められています。
デザインに込められた意味や想いを知ると、より一層美しく、愛らしく感じられますよね。

このような紋様は「割出し」「荒摺り」「中摺り」「石掛け」「磨き」の大きく5段階の製法で作られます。
割出し:ガラスの表面にカットのもとになる線や点を描く
荒摺り:模様を大まかに削り出す
中摺り:細かい文様を削り出す
石掛け:削り出した粗い面を滑らかにする
磨き :不透明な面をさらに細かく磨き上げる

基本この5段階で行われ、最後の磨きでは木盤と磨き粉を使う木盤磨きと酸を使うくすり磨きという方法があります。

椎名切子の工房の中でも私のイチオシが、最後の磨きを行う機械。

磨き粉が飛び散ってできた塊や力がかかる方向にしなっている藁を束ねたほうきになんとも言えない味を感じます。
木製の機械に刻まれた大小様々な傷や薄くなったベルト、元の色が分からないくらい使われた洗面器からは繊細に、そして力強く磨き上げる職人の力加減や表情、立ち姿が目に浮かびます。
長年大事に愛用されてきたであろう、椎名切子の歴史を感じる1つです。

このような機械たちによって、複数の段階を経てひとつひとつに大切な想いが込められた紋様が刻まれていきます。

その中から今回、限定容器のデザインとして選んだのが「七宝」紋様でした。

七宝紋様に込められた職人の想い。添えられた「七宝。良縁は宝物ですね。」の一言に心が震えた瞬間。

江戸切子の限定容器が形になっていくにつれて、より強く感じていたのが、“友人の友人の知り合い”という遠いつながりをたぐり寄せ、人との縁から生まれた「椎名さんとの出会いへの感謝の気持ち」でした。

加工デザインを検討している際も、椎名さんが企画担当者の私以上にアイディアをたくさん出してくれました。

Coyori10周年の特別感椎名切子の加工技術である平切子とサンドブラストが最も映えるデザイン、そして一番はお客様への感謝をどう表現するか…。様々な意見が飛び交いました。

そうやって、“40mLの瓶”という限られた範囲に刻むデザインに想いをはせ、辿り着いたのは企画の本質である「10周年を機にCoyoriが大切にしてきた、“日本のいいもの”を未来に繋いでいきたいという想いを形にする」ということでした。

表面にはCoyoriが歩んだ10年の歴史を。裏面には椎名切子の見事な加工技術の集大成を。

デザインの方向性が決まり、試作品が私の手元にやってきたのが2020年の秋。

試作品を受け取った際に椎名さんから送られてきたメッセージには「七宝。良縁は宝物ですね。」という一言が添えられていました。
椎名さんとの出会いに感謝をかみしめていた私にとっては、まさしく“心が震える”最高の言葉でした。

七宝とは仏教の教典に出てくる七種の宝のこと。金,銀,瑠璃【るり(青い宝石)】,玻璃 【はり(水晶)】 ,しゃこ貝 ,珊瑚,瑪瑙【 めのう(縞状の鉱物)】であると言われています。
円形が永遠に連鎖し繋がるこの柄に「円満」「調和」「ご縁」などの願いが込められた縁起の良い柄とされています。また、「人の御縁や繋がりは七宝と同等の価値がある」事を示している柄でもあります。

今回の10周年特別プロジェクトが生んだ椎名さんとの出会いはもちろん、Coyoriの10年を共に歩んでくださったお客様、生産者様、メーカー様、これまでCoyoriが出会ってきたたくさんの方々との出会い、そのご縁への感謝の気持ちがそこにはありました。

表面にはCoyoriのロゴマークがあしらわれています。

透明瓶にうっすらと浮かび上がるロゴには、Coyoriがお客様とともに歩んだ10年の重みや、10周年を迎えることができた感謝の気持ちを込めました。うっすらではあるものの瓶の中央に浮かび、これからのCoyoriの10年、20年にもご期待いただける堂々としたデザインです。

ロゴがうっすらと入っているのがポイントで、美容液オイルの化粧瓶としてご使用いただいた後、一輪挿しにする際にお花を美しく活かすような生活になじむデザインを意識しました。この瓶に四季の花を飾っていただくことで春夏秋冬をご自宅で愉しんでいただけたらいいなという想いを込めました。

裏面には平切子加工による7つのなめらかな面加工が施され、その面1つ1つにはサンドブラスト加工で重なり具合が異なる円の連なりが七宝紋様として加工されています。

面ごとに異なる円の連なりは月の満ち欠けをイメージしていて、Coyoriが大切にしている日本の四季の移ろいを表現しました。

7つの面の七宝紋様は目を凝らしてやっと見える程度。世界でも最高峰と言われている椎名切子のサンドブラスト技術が結集しています。その繊細さは試作品を手にした瞬間、息を飲んだほど。幅0.09mmの線ですら再現可能というから驚きです。手仕事ならではの温もりもあり、細かく重なり合った線は何度見てもうっとりします。

また、この江戸切子の限定容器を満たすものとしてCoyori最高峰の彩醒オイルを選びました。ずっと手元で大事に使用いただきたいこの容器には、一生ものの肌を考えた彩醒オイルがふさわしいと考えました。

そうして1年かけてようやく製品として形になり、2021年5月に終えた撮影の様子がこちら。

アングル的に見えていませんが、目には涙が浮かんでいて画面がよく見えませんでした。笑

写真に映るモニター画面を見てお気づきかと思いますが、今回の化粧箱は通常の紙箱ではなく桐箱を選びました。
江戸切子のデザイン文様を検討していくうちに、お客様が使用する姿や商品を手に取っていただいた時の風景やお顔を想像した時に、ただの配送資材として1度きりで破棄される消費物ではなく、生活の中で有効活用されるものにしたいという想いが生まれました。

この桐箱屋さんも本当に素敵なので、第五弾でレポートさせてください!

 

*バックナンバー

【江戸切子プロジェクト①】世界で数個だけ、美容液オイル特別容器の開発秘話

【江戸切子プロジェクト➁】特別な技法を受け継ぐ職人、伝統と革新の融合を実現し続ける工房との出会い

【江戸切子プロジェクト③】世界に一つの小瓶がつなぐ七つのご縁をたぐるまで。江戸切子の美容液オイル